吹き抜けは何のためにつくる?広がり・採光・居場所を比べる3実例
この記事の内容
吹き抜けを考え始めると、まず「明るくなりそう」「広く見えそう」という期待が浮かびます。けれど、どこで広がりを感じたいのか、どこから光を入れたいのか、その近くでどう過ごしたいのかまで考えると、必要なつくり方は変わってきます。
今回の3実例でも、優先していたことは同じではありませんでした。リビング全体を2階の廊下までつなげた家、単純に塞がずに吹き抜け上部から光を取った家、吹き抜けと窓とヌックを組み合わせた家があります。
吹き抜けの有無をそのまま真似するのではなく、「何のために必要だったのか」から見ると、自宅で採用するかどうかも整理しやすくなります。
オオトリ建設|入った瞬間の大きな広がりを優先した吹き抜け
LDK18畳でも、リビング全体を上までつなげていた
この家では、LDKは18畳だと説明されています。そのうえで「広く感じません」というやり取りがあり、続けて「だからリビング全体をもう吹き抜けにした」と語られています。吹き抜けを一部分だけに掛けたのではなく、リビング全体を対象にしていることが分かります。
さらに「リビングも2階まで」「2階の廊下までつなげましたね」と続きます。ここで確認できるのは、1階の天井を高くしただけではなく、2階側の廊下まで視線がつながる構成にしていることです。
吹き抜けを検討するときは、単に高さを足すかどうかではなく、どこまで連続して見せたいのかを図面上で確かめたいところです。上下階のつながり方で、同じ面積でも体感は変わります。
この家が重視していたのは、入室した瞬間の印象だった
この場面では、「入った時の大迫力」「行った瞬間」「撮影スタッフみんなうわーっていう感じ」と、入室時の見え方が続けて語られています。吹き抜けの狙いが、座って過ごす時間だけでなく、空間に入った最初の印象にも向いていることが読み取れます。
畳数そのものよりも、最初の一歩でどう感じるかを優先したいなら、この実例のように吹き抜けを見せ始める位置まで含めて考える方法があります。
この家では、吹き抜けが「広く見せる装置」であると同時に、「入った瞬間の迫力」をつくる役割も担っていました。
この実例で分かることと、別途確認したいこと
この引用部分で確認できるのは、18畳のLDKに対して、リビング全体を吹き抜けにし、2階の廊下までつなげ、入ったときの迫力が語られていることまでです。窓の位置や明るさの細かな調整、この吹き抜けが家全体のどこまで及ぶのかは、この場面だけでは分かりません。
ここから自宅に引きつけて考えるなら、「誰が」「どの位置から」「広いと感じてほしいのか」を先に言葉にすると、吹き抜けの必要性が整理しやすくなります。リビングの中心で感じたいのか、玄関や通路から見せたいのかで、向く形は変わります。
エスコネクト|外からの視線を考えながら上から光を取る吹き抜け
公園に面する敷地で、単純に閉じない方法を探していた
この家では、公園に面する敷地について「すごいいい敷地だなと思ったけど、意外と難しい」「考慮する点結構ある」と語られています。開けた立地ならではの良さがある一方で、計画上の難しさもある条件だったことが分かります。
そのうえで「単純に塞いちゃったら…全然開放的じゃなくてもったいない」と続きます。視線への配慮から閉じるだけではなく、開放感を残す方法を探していた流れの中で吹き抜けが出てきています。
周囲から見られやすい敷地では、まず大きな窓を付けるか閉じるかの二択で考えがちです。ただ、何を閉じて何を残したいのかを分けて整理すると、別の解き方が見つかることがあります。
吹き抜けを、抜け感と採光の両方に使っている
実際の説明では、「この窓があるないで結構閉鎖感違う」「この抜け感がある」「でも…見えない」と、抜け感と見えにくさが一緒に語られています。続けて「今回はこう吹き抜け作ってあげてこの上から光り取るんですよね」とあり、吹き抜け上部から光を取る考え方が明示されています。
この家で吹き抜けが担っているのは、単に見た目を開放的にすることだけではありません。外周を大きく開きにくい条件の中で、光の入口を上に求める手段にもなっています。
この場面だけでは、窓の向きや高さ、吹き抜けの寸法までは分かりません。ただ、閉じすぎると閉鎖感が出る敷地で、吹き抜けを採光のルートとして使っていることは確認できます。
採光のための吹き抜けとして考える視点
この家では、吹き抜けが「広く見せるため」だけでなく、「どこから光を入れるか」の答えにもなっていました。
道路や公園、隣家との距離が近い敷地なら、「どの面は閉じるのか」「その代わり光はどこから入れるのか」を打ち合わせでセットで確認したいところです。吹き抜けを採用するかどうかも、その順番で考えると必要性が見えやすくなります。
フォレスト・オオモリ|吹き抜けとヌックで居場所まで広げた家
19畳のLDKを、吹き抜けと窓の取り方で広く見せていた
この家のLDKは19畳と説明されています。そのうえで「19よりもっと広く見える」と話が出ており、理由として「吹き抜けの取り方ともちろんこっちの窓の取り方っていうのでこう広く感じる」と語られています。
ここで確認できるのは、吹き抜けだけを単独で効かせているのではなく、窓の取り方と合わせて広がりをつくっていることです。縦方向の抜けと、窓による見え方がセットで扱われています。
吹き抜けを入れたいと思っても、それだけで印象が決まるわけではありません。どこに窓があり、どこへ視線が抜けるかまで一緒に見ないと、同じような広がり方にはなりにくいはずです。
扉を付けないヌックで、開放感を途中で止めない
この家では、「本当はここに扉があってもいいけどそれをあえてのけて」「ここも開放感でヌックで取ってる」と説明されています。吹き抜けで上に抜くだけでなく、隣の小さな場所も閉じずにつなげる考え方が示されています。
ヌックは別室として切り離されているのではなく、開放感のつくり方の一部として扱われています。扉を設ける選択肢がありながら、あえて外している点がこの家の特徴です。
吹き抜けを採用しても、周辺を細かく仕切る計画なら体感は変わるかもしれません。どこを閉じて、どこをつなげるのかは同時に検討したいところです。
本を読む、音楽を聞く。吹き抜けの周辺に過ごす場所を増やしている
さらにこの実例では、「ここでこう本読めたり」「こっちも本読めたりできる」「ここで音楽聞いたりもできる」と、具体的な過ごし方が続けて語られています。吹き抜けの目的が、広く見せることだけで終わらず、その周辺でどう過ごすかまで含んでいることが分かります。
この家の吹き抜けは、空間の広がりをつくるだけでなく、家の中の居場所を増やす仕掛けにもなっていました。
吹き抜けを採用するか迷うなら、その下や隣で何をするのかまで考えておくと判断しやすくなります。長く過ごす場所を明るく開きたいのか、家族の気配を感じながら少し別の時間を過ごせる場所を増やしたいのかで、必要な隣接空間も変わります。
3実例を比べると、吹き抜けで解決したかったことが違う
オオトリ建設の家では、18畳のLDKに対してリビング全体を吹き抜けにし、2階の廊下までつなげています。そこで語られていたのは、入ったときの「大迫力」でした。中心にあるのは、最初に受ける広がりの印象です。
エスコネクトの家では、公園に面する敷地の難しさが語られたうえで、「単純に塞いちゃったら…全然開放的じゃなくてもったいない」と説明され、吹き抜けをつくって上から光を取る考え方が示されています。中心にあるのは、視線への配慮と採光の両立です。
フォレスト・オオモリの家では、吹き抜けと窓の取り方で広く感じさせることに加え、扉を付けないヌックや、本を読む・音楽を聞くといった使い方まで語られていました。中心にあるのは、広がりと居場所を一緒につくることです。
同じ吹き抜けでも、入った瞬間を印象づけたいのか、視線条件が難しい敷地で光を取りたいのか、日常の居場所を増やしたいのかで、必要な形は変わります。吹き抜けの有無を先に決めるより、「何のために欲しいのか」から逆算したほうが、自宅の条件に結び付けやすくなります。
今回の原文で確認できたのは、広がり・採光・居場所という役割の違いまでです。空調、構造、費用、性能の優劣までは出ていないため、その点は別の根拠で確認する前提にしておくのが安全です。
住宅系YouTuberはこう解説している
ルームツアーとは別に、住宅系YouTubeでは次のような解説があります。
家づくり せやま大学【ちょうどいい塩梅の家づくり】|吹き抜けがなくても開放的にはできるという説明
『【2026年最新版】憧れるけど...実は不便!期待外れの設備・仕様・間取り11選[注文住宅/新築]』では、吹き抜けについて「開放的な家」「注文住宅感が出る」と希望する人がいる一方で、「なくても解放的にはできますよ」と述べています。あわせて、吹き抜けは面積に入らなくても工事費用はかかり、空調費用も上がるという話し方をしています。
打ち合わせで確認したいこと
- 吹き抜けでいちばん実現したいのは、入った瞬間の広がり、日中の採光、居場所づくりのどれですか。
- 吹き抜けを見せたいのは、家に入ってすぐですか、それともリビングに入ってからですか。見え始める位置を図面で確認できますか。
- 外からの視線が気になる面はどこですか。その面を閉じた場合、光はどこから入れる計画ですか。
- 吹き抜けの下や隣は、通路として使いますか、それとも長く座る場所として使いますか。
- 吹き抜けの開放感を活かすために、隣接する場所に扉や壁をどこまで設ける予定ですか。
- 窓の計画は、吹き抜け単体ではなく、座った位置や立った位置からの抜けまで含めて検討できていますか。
- LDKの畳数だけでなく、2階廊下や隣接スペースとのつながりで体感をどう変えたいかを共有できていますか。
- 敷地条件が難しい場合、吹き抜けは『開放感の演出』として欲しいのか、『光の入口』として必要なのかを設計者に伝えられますか。
- 吹き抜けを設けたあと、その周辺で読む、くつろぐ、子どもが過ごすなど、具体的な使い方までイメージできていますか。
吹き抜けは、同じように見えても目的が違えば答えも変わります。入った瞬間の広がりをつくりたい家、外からの視線を考えながら上から光を取りたい家、ヌックまでつなげて居場所を増やしたい家。今回の3実例を見比べると、先に決まっていたのは「天井を高くしたい」ではなく、「どんな感じ方や過ごし方をつくりたいか」でした。図面を見るときも、吹き抜けの有無だけでなく、その役割を言葉にして打ち合わせへ持っていきたいところです。
