閉じた印象と開いた使い方はどう両立する? 実例で見るキッチン配置の考え方
この記事の内容
キッチンはあまり見せすぎたくない。でも、壁のように閉じてしまうと、料理を置く場所が減ったり、向こう側の人とやり取りしにくくなったりします。そんな迷いは、オープンかクローズかの二択だけでは決めにくいものです。
今回の3実例では、東大阪市の家は囲いながら受け渡ししやすくすること、2階リビングの家は限られた広さの中で収納まで含めて整えること、山口市の27坪の家は造作で囲いながら予算の見通しと空間全体の見え方をそろえることが、それぞれの出発点として語られていました。
同じように少し閉じたキッチンに見えても、何を楽にしたいかが違えば、選びたい形も変わります。以下では、一軒ずつ配置と採用理由を見ていきます。
東大阪市の家|囲いながら、向こう側とのやり取りを切らないキッチン
上部を少し開けて、閉じた印象と抜けを両方つくる
この家のキッチンは、造作でまわりを囲いながら、上部に開口を残したつくりです。動画では、全部を付けてしまうと「囲われた感」が薄くなるため、あえて30cmぐらい開けたと説明されています。そのうえで、「キッチンがクローズなんですけどオープンにもなるし」という提案として紹介されていました。
また、カウンターキッチンやアイランドキッチンが多かったので、「そうじゃないキッチン」として見せたかったとも語られています。完全に開くのではなく、包まれ感を残しながら抜けもつくる。その狙いが、囲い方そのものに表れています。
ここから読み取れるのは、開放感は平面を全部開けることだけで生まれるわけではない、ということです。手元を隠したいなら、まずはどこを閉じて、どこだけ抜きたいのかを分けて考えると、希望が整理しやすくなります。
開いた使い方は、受け渡しの場面で考えられている
このキッチンでは、片側が調理機器ではなくカウンターになっていて、動画でも「こうしてヒュッとこっちでやったらすぐそっちから取れる」と説明されています。さらに「面白い飲食店って感じ」「ここでコーヒー入れながら奥さんに出してあげるとかいう感じ」というイメージも添えられていました。
つまり、この家の“オープン”は、全部見せることではありません。向こう側の人とやり取りする場所は残しつつ、囲いのあるキッチンとして計画されています。動画では、すぐ取れる受け渡し方や、コーヒーを渡すイメージまで具体的に説明されていました。
自宅で置き換えるなら、反対側の人と何を受け渡したいのかを先に考えたいところです。料理なのか、飲み物なのか、食器なのかで、欲しい開き方やカウンターの使い方は変わってきます。
見た目は、換気扇や照明の納まりまで含めて整えている
この家では、上部の空洞部分にダクトの出口を納めて見えにくくし、換気扇を隠すための垂れ壁も設けています。照明はライン状に入れて「すっきり感」を出す意図が説明されていました。さらに、少し隙間を設けて物を置けるようにしつつ、照明の電源装置の納まりにも対応していると語られています。
囲いの形だけを見ると閉じたキッチンですが、実際の印象は上部の軽さや設備の見せ方で大きく変わります。この家では、設備をどこまで隠すかまで一体で考えて、重く見えすぎないように整えていました。
打ち合わせでは、レイアウト名だけでなく、換気扇やダクト、照明をどこまで見せたいかも一緒に確認したいところです。形を決めてから納まりに悩むより、最初からまとめて考える方が方向性をそろえやすくなります。
2階リビングの家|限られた広さの中で、収納まで含めて整えるキッチン
最初に見ていたのは、憧れの形式よりスペース配分だった
この家では、手元を隠しやすいキッチン形式や、ペニンシュラ、アイランドを選ぶ人もいると触れたうえで、それらは「どうしてもスペースをとってしまう」と説明されています。さらに、土地探しのときから「そんなにキッチン空間で広く取れないかもしれない」という前提があったとも語られていました。
ここで分かるのは、見た目の好みから先に形を決めたわけではないということです。キッチンをどう見せるかの前に、家全体の中でどこまで面積を割けるかを確認していました。
少し閉じたキッチンを考えるときも、まず確かめたいのは希望の形式名ではなく、通路や背面収納まで含めて無理なく納まるかです。見た目から入ると、ほかの場所にしわ寄せが出ることがあります。
収納の使い方を聞いてから、形を提案している
この家では、「どういうふうに何か使いたいか」と「どういったものがあるか」を聞いたうえで、キッチンの形を提案したと説明されています。続けて、キッチン収納の使い方は「本当様々」で、今回のケースでは「うまく使わないと収納って確保できなかったのでこの形になってますね」と語られていました。
つまり、キッチン本体の見た目だけでなく、しまいたい物の量や使い方が先にあり、その条件から形を整えています。手元をどこまで隠したいかだけではなく、何をどこへ納めたいかが配置に影響していたと分かります。
ここから考えたいのは、生活感を抑える方法が腰壁だけではないという点です。家電やゴミ箱の置き場まで含めて相談すると、見せ方と使いやすさを両立しやすくなります。
落ち着いた見え方は、背面収納の計画でも支えられている
動画では、炊飯器を収納内に置いたまま使えて、蒸気がそこから出ていくことや、ダストボックスを一体化していることが紹介されています。さらに、日常使いの食器や家電も背面側に納める考え方が語られていました。
この家のキッチン計画は、正面の見え方だけで完結していません。普段出やすい物をどこへ収めるかまで先に考えることで、限られた広さの中でも落ち着いた印象を保とうとしていることが見て取れます。
見せたくない物が多いなら、キッチン本体の形式だけで解決しようとせず、背面収納の厚みや使い方も一緒に検討したいところです。少し閉じた印象は、正面よりむしろ背面計画で決まることがあります。
山口市の27坪の家|造作で囲いながら、空間全体の見え方をそろえるキッチン
造作で囲うのは、予算の見通しと高級感のため
この家では、アイランドではなく、造作でカウンターをつくってキッチンを囲ったと紹介されています。見た目の高級感や周囲の造作との合わせやすさに加え、コストを抑え、その分を食洗機の予算へ回すという説明もありました。
ここで囲っている理由は、単に閉じた印象をつくるためだけではありません。既製のキッチンを単体で主役にするより、造作と一緒に空間をまとめ、そのうえで予算の方向も見えやすくする。そうした考え方が出発点になっています。
同じ『囲う』でも、受け渡しを重視した囲い方とは狙いが異なります。造作を検討するなら、見た目だけでなく、空間全体をどこまで一体で整えたいかも合わせて考えたいところです。
リビングから見えるのは、キッチン本体より背面収納かもしれない
この家では、「実際はリビングから見た時っていうのはこのバックの収納が見えてくるのでキッチン見えないですよね」と説明され、そのため「ここっていうのも大事な要素になってくる」と語られていました。
キッチン計画では天板や立ち上がりに目が向きがちですが、この家が重視していたのは、日常でよく視界に入る面です。背面収納まで含めてキッチンの印象として扱っていることが分かります。
打ち合わせでは、立ったときの見え方だけでなく、ソファやダイニングから何が見えるかも確認したいところです。閉じた印象を上品に見せたいなら、背面収納の素材や納まりが効いてきます。
開いた感じは、キッチン単体ではなく周囲の連続感から生まれている
この家では、キッチンのまわりだけでなく、外と中の壁を同じ素材で連続させ、天井や色味も統一して、内外がつながって見えるように計画されています。動画でも、「このキッチン見ていただくと外と中の壁全部同じ素材で連続してますよね」と説明されていました。
そのため、この家の開いた印象は、キッチンを完全に開放したから生まれているわけではありません。少し囲いがあっても、周囲の壁や天井、収納の素材感が連続して見えることで、空間全体は閉塞的に見えにくくなっています。
ここから読み取れるのは、開放感はレイアウト名だけで決まらないということです。囲いをつくるなら、同時に周囲をどう連続して見せるかも検討すると、重さを抑えやすくなります。
3つの実例を比べると、楽にしたかったことが違う
東大阪市の家では、造作で囲いながら上部を開け、向こう側の人と受け渡ししやすい使い方が語られていました。
2階リビングの家では、ペニンシュラやアイランドなど、スペースを取りやすい形式もあるなかで、持ち物や使い方を聞いたうえで収納まで含めた形が提案されていました。
山口市の27坪の家では、造作で囲うことで予算の見通しを立てやすくし、背面収納や周囲の造作とも合わせやすくする考え方が説明されていました。
同じように少し閉じたキッチンでも、受け渡しをしやすくしたいのか、限られた広さの中で収納まで整えたいのか、空間全体の見え方と予算をそろえたいのかで、選ぶ形は変わります。
形式名から決めるより先に、何を楽にしたいかを分けて考えると、クローズとオープンの間にある選択肢を見つけやすくなります。
住宅系YouTuberはこう解説している
ルームツアーとは別に、キッチン配置を解説する住宅系YouTuberの話として、配置を見る項目に触れている1本だけを紹介します。
家づくり せやま大学【ちょうどいい塩梅の家づくり】|住宅系YouTuberはこう解説している
家づくり せやま大学は「キッチン配置18パターン」の解説動画の冒頭で、キッチンの配置を間違えると入居後に後悔することがあるとして、オープンキッチンなのか壁付けなのか、ダイニングとの位置関係が正面型なのか並列型なのか、さらにカップボードやパントリーのスペースの確保の仕方まで解説していくと話しています。
この引用で確認できるのは、この動画がキッチン配置を見る項目として、オープンか壁付けか、ダイニングとの位置関係、カップボードやパントリーのスペース確保を挙げていることです。
打ち合わせで確認したいこと
- キッチンで減らしたい手間は、配膳や受け渡しですか。それとも、散らかりやすさや収納不足ですか。
- 向こう側にいる人と、何をどの場面で受け渡したいですか。料理、飲み物、食器で必要な開き方は変わりますか。
- キッチンに割ける広さはどのくらいで、通路や背面収納まで含めても無理のない計画になっていますか。
- ソファやダイニングから、実際によく見えるのはキッチン本体ですか。それとも背面収納ですか。
- 炊飯器、ゴミ箱、家電、小物など、隠したい物と出しておきたい物は何ですか。
- 換気扇やダクト、照明の納まりをどこまで見せる前提で考えたいですか。
閉じた印象と開いた使い方は、両立できます。ただし、そのやり方は一つではありません。囲いながら受け渡ししやすくする家もあれば、広さと収納を優先して落ち着いた見え方をつくる家もあり、キッチン単体ではなく背面収納や素材の連続感で開放感をつくる家もあります。打ち合わせでは、好きな形式名を伝える前に、毎日のどの動作を楽にしたいのかを具体的に話すことが、配置を絞る近道になります。気になる実例ページや条件検索でも、見た目だけでなく「なぜその形にしたのか」まで見比べてみてください。
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