家族の衣類収納はまとめる?分ける? 3実例で見える配置理由と考え方
この記事の内容
朝は洗濯機を回しながら身支度をして、夜は帰宅してすぐお風呂に入りたい。そんな毎日の中で、衣類収納を一か所にまとめるか、寝室や子ども部屋ごとに分けるかで迷う人は多いはずです。
ただ、この判断はファミリークローゼットという名前の人気だけでは決めにくいテーマです。家族がどこで着替えるのか、乾いた服をどこまで運ぶのか、来客中にどの通り道を使いたいのかまで入れると、向く形は変わります。
今回の3実例でも、共有収納で着替える前提に無理を感じて分けた家、平屋でランドリーが近いから各室に分けた家、寝室と一体で使う前提でまとめた家と、選び方ははっきり分かれていました。
同じ衣類収納の話でも、各実例が楽にしたかったことは違います。配置の形だけでなく、なぜそうしたのかを見ると、自宅で何を優先したいかも整理しやすくなります。
ホームランディックの住まい|共有収納に集めるより、落ち着いて着替えられることを優先した家
ランドリー横にしまえても、そこで着替えるとは限らない
この住まいでは、1階にファミリークローゼットを置く案自体は考えたものの、暮らしを想像したときにまず気になったのが「どこで着替えるのか」でした。動画では、一般的なファミリークローゼットは通路状になりやすく、人が1人通れるくらいの幅のことが多いこと、扉がない例や開けっぱなしで使う例も多く、誰かが入ってきてもおかしくない場所になりがちだと話されています。さらに、自分たちは今よくても、子どもが大きくなったときに共有の場所で着替えるのを嫌がるのではないか、という見方も語られていました。洗濯後にすぐしまえる便利さだけでなく、その場所を着替えの場として無理なく使えるかまで確かめていた家です。
ここから読み取れるのは、収納をまとめるかどうかの前に、家族が安心して着替えられる場所かを見ていたことです。洗う、しまうの動きだけなら合理的でも、着替えで気を使うなら別の形のほうが合うことがあります。
脱衣室も、朝の使い方まで入れると着替え場所にしにくかった
では脱衣室で着替えればよいのかという点についても、この家では朝の使い方が重なることを気にしていました。動画では、朝に入浴する人がいて、その間は脱衣室を使うこと、洗濯機も朝に回すことが語られています。広さがあれば着替えられる、で終わらせず、誰かがそこで着替えていると他の家族が使いにくくなることまで想像していました。共有収納で着替えることへの抵抗に加え、脱衣室も朝の利用が重なりやすい。そう考えた結果、この暮らしではファミリークローゼットは要らないのではないか、という結論に至ったと説明されています。
脱衣室を着替え場所に兼ねるかどうかは、広さだけでは決まりません。朝の入浴、洗濯、身支度の時間帯がぶつかる家では、近いことより、同時に使っても困らないことのほうが大きな条件になります。
入浴前後の衣類だけ近くに置き、普段着は各部屋へ分けた
この住まいでは、ファミリークローゼットをなくした代わりに、パジャマと下着類を洗面・脱衣・ランドリーの近くに収納しています。動画では、帰宅後はその場所でパジャマを取り、棚の上に置いてから入浴し、上がってリビングへ行く流れが紹介されていました。一方で、普段の服については、子どもが成長したときの着替えや、大人が服を選ぶ場面も踏まえて、各部屋のクローゼットを選んだと説明されています。全部を一か所にまとめるのではなく、入浴前後に使う物だけを水回りの近くに寄せ、ふだん着は個室側へ分ける組み立てです。
衣類収納は、まとめるか分けるかの二択だけではありません。パジャマや下着類と、外出着や仕事着を同じ場所に置く必要があるのかを分けて考えると、必要な収納の位置が見えやすくなります。
エスコネの平屋|ファミクロを作るより、ランドリーから各室へ配りやすくした家
ランドリーから子ども室、寝室へそのまま配れる並びにしていた
この平屋では、ランドリーで乾いた服を取ったあと、キッチン裏側の動線を通って子ども室へ入り、さらにその先の寝室までつながる構成が紹介されています。子ども室には掛ける収納があり、寝室側にも壁面収納が設けられています。つまり、乾いた服をいったんファミリークローゼットに集めてから仕分けるのではなく、ランドリーから各部屋へそのまま配れる前提で計画された住まいです。収納が分かれていても、運ぶ距離や曲がり方が短ければ、分散収納そのものが大きな負担になりにくいことが分かります。
分散収納が面倒に感じるかどうかは、部屋数だけでは決まりません。ランドリーから各室までのつながり方が素直なら、まとめる収納を別で作らなくても回しやすい場合があります。
平屋でランドリーが近いから、まとめる収納の必要性が下がっていた
動画では、今回ファミリークローゼットを別で作らず、各居室に収納する形にした理由として、平屋であることに加え、ランドリーが寝室まわりに近いことが挙げられています。説明では、ファミリークローゼットは、たくさんの服を遠い距離まで歩いて配らないといけないのを減らすために一か所へまとめる考え方だが、この家ではそこまでしなくても家事負担は減らせる、という整理でした。階段がなく、ランドリーと各室が近いという条件が、各室収納を成立させています。
この実例は、ファミリークローゼットの要不要を収納量ではなく移動の問題として見ています。自宅でも、乾いた服を運ぶ負担が本当に大きいのかを、階数や距離と一緒に確かめたいところです。
来客中は裏動線を使い、表側のくつろぎを崩しにくくしていた
この家では、寝室へ向かう道が一つではありません。LDK側から入る経路に加えて、裏側から回れる経路があり、来客時にはそちらを使えると説明されています。さらに、動画では後ろ側に洗濯の流れもまとまっているため、友人が来ていても家事を進めやすい構成として紹介されていました。ここで確認できるのは、各室収納の計画に加えて、来客時は裏動線を使えるようにしていたことです。収納計画と通り道の計画を一緒に組んでいる実例といえます。
衣類収納を考えるとき、家族だけの動きに目が向きがちですが、来客時の通り道まで見ると選び方が変わることがあります。洗濯や収納を止めたくないなら、どこを裏側にしたいかも一緒に考えると整理しやすくなります。
アーチの平屋|寝室と一体で使う前提で、衣類をまとめた家
3.5畳のファミリークローゼットを、通るだけの空間にしなかった
この平屋では、ランドリーの先にウォークスルーのファミリークローゼットがあり、その広さは3.5畳と説明されています。特徴的なのは、単独の収納室として切り離されているのではなく、廊下も兼ねながら成り立っている点です。動画では、人がただ通るだけの空間をできるだけ作らず、限られた面積を機能的に使う考え方が語られていました。ファミリークローゼットは収納量を確保する場所であると同時に、回遊動線の一部でもあります。まとめる収納を作る代わりに、余分な通路を増やさない組み立てです。
まとめる収納が向くかどうかは、広い部屋を一つ取れるかだけではありません。この実例のように、通路の役割まで持たせられるなら、収納室が面積を奪う存在ではなくなります。
ランドリーからしまえて、そのまま寝室までつながる
動画では、ランドリーで部屋干ししたあと、そのままファミリークローゼットへ収納できると説明されています。さらに、このファミリークローゼットの奥は寝室につながっており、両者は仕切りなしで続いています。寝室側のドアを閉めて区切ることはできますが、基本はファミリークローゼットと寝室を一体的な空間として使う考え方です。説明の中では、寝室とファミリークローゼットを合わせて考えると、実質的には8畳の寝室空間のように使える、という整理もされていました。収納を一か所に集めても、寝室と切り離していないのが特徴です。
ここから読み取れるのは、まとめる収納を孤立させないことの大切さです。寝室とのつながりが弱いファミリークローゼットは便利さが変わるので、同じ名称でも位置関係まで見たいところです。
二人暮らしの衣類と荷物を、整った状態で保ちやすくする発想だった
この家では、夫婦2人暮らしでも、洋服が好きだったり荷物が増えたりすることを前提に、これだけのファミリークローゼットがあれば整った状態を保ちながらコンパクトに暮らしていけるのではないか、と説明されています。また、寝室のドアは玄関ホールとLDKの入り口につながっており、家の中をぐるっと回れる行き止まりのない動線にもなっています。つまり、衣類を一か所にまとめつつ、その場所が寝室の一部であり、回遊動線の一部でもあるように計画されていました。
まとめる収納が合うのは、しまう作業だけが楽になる家ではなく、寝室との関係や回遊のしやすさまで噛み合っている家です。収納室の広さだけでなく、その前後でどんな動きが続くかも確かめたいポイントです。
3実例を比べると、同じ衣類収納でも「楽にしたいこと」が違う
3つの実例は、まとめるか分けるかの答えが異なります。ホームランディックの住まいは共有収納で着替えることや脱衣室の混雑を避ける方向で分け、エスコネの平屋はランドリーから各室が近いから分け、アーチの平屋は寝室と一体で使えるようにしてまとめていました。
| 比べたいこと | ホームランディックの住まい | エスコネの平屋 | アーチの平屋 |
|---|---|---|---|
| 何を楽にしたかったか | 共有の場所で気を使わず着替えたい | 乾いた服を遠くまで運ばず配りたい | 限られた面積を機能的に使いながら、衣類と荷物をまとめる |
| 収納の置き方 | パジャマ・下着類は水回り近く、普段着は各部屋 | 子ども室と寝室それぞれに収納 | 3.5畳のファミリークローゼットに集約 |
| ランドリーとの関係 | 入浴前後に使う物だけを近くに置く | ランドリーから裏動線で各室へそのまま配る | ランドリーからそのままファミリークローゼットへしまう |
| 着替え場所の考え方 | 共有収納や脱衣室での着替えに無理が出ると考えた | 着替え場所の詳述はないが、各室へ配れる構成 | 寝室とファミリークローゼットを一体で計画 |
同じ分散収納でも、ホームランディックの住まいは共有の場所で着替えにくいことが出発点で、エスコネの平屋はランドリーから各室が近いことが出発点です。逆にアーチの平屋は、まとめる収納を寝室と切り離さず、通路も兼ねさせることで成立させています。
自宅で考えるときは、収納量の多い少ないより先に、家族がどこで着替えるのか、乾いた服をどこまで運んでいるのか、来客中に通りたくない場所はどこかを書き出してみてください。そうすると、必要なのが大きなファミリークローゼットなのか、各室収納なのか、あるいは使う場面ごとの分け方なのかが見えやすくなります。
住宅系YouTuberはこう解説している
ここからは、ルームツアー実例とは別に、住宅系YouTuberが収納計画をどう見ているかを短く補足します。実例の採用理由を裏付けるためではなく、衣類収納の考え方を別の角度から整理する材料として読んでみてください。
兵庫、大阪で高断熱高気密住宅専門の建築家集団 松尾設計室|住宅系YouTuberはこう解説している
松尾設計室の動画では、シューズクロークやパントリー、ファミリークローゼットのような人気の収納は要望に上がりやすく、実際に充実した家も増えている一方で、それ以外の物を置く場所が足りない住宅が増えている、という話が出てきます。
この発言をこの記事のテーマに引き寄せると、ファミリークローゼットを作るかどうかだけでなく、家全体の収納の置き方まで含めて見たい、という視点が補えます。衣類を一か所にまとめる案が魅力的でも、その分ほかの場所の収納が薄くならないかは別に確かめたいところです。
打ち合わせで確認したいこと
- 家族それぞれは、朝と夜にどこで着替えていますか。共有の収納で着替えることに抵抗はありませんか。
- パジャマ・下着類と、普段着・仕事着を本当に同じ場所に置く必要がありますか。使う場面ごとに分けたほうが自然ではありませんか。
- ランドリーから寝室や子ども部屋まで、乾いた服を何歩運んでいますか。平屋か2階建てかで、その負担はどれくらい変わりますか。
- 脱衣室を着替え場所にした場合、入浴、洗濯、身支度の時間が重なって使いにくくなりませんか。
- 来客中でも洗濯や収納を続けたいですか。そのとき寝室まわりや水回りへ入る道を分けたいですか。
- もしまとめる収納にするなら、寝室や回遊動線とどうつなげると使いやすいですか。孤立した収納室になっていませんか。
衣類収納は、ファミリークローゼットが正解か、各室収納が正解かで決まるものではありません。共有の場所で着替えやすいか、ランドリーから運ぶ距離が本当に長いか、寝室や来客動線とどうつながるか。その家が何を楽にしたかったのかまで見ると、自分たちに合う形が選びやすくなります。打ち合わせでは、欲しい部屋の名前だけでなく、毎日どこで着替え、どこへ運び、どこを通りたいかまで伝えてみてください。
実例を詳しく見る
あわせて読みたい記事
実例から見えた、室内干しを考えるときの配置と設備の組み立て方
室内干しは、物干しを付ければ終わりではありません。実例を見ると、外干しへつなぐ家、ランドリー内で置く・たたむまで寄せる家、室内完結を前提にバルコニーの役割を変える家では、必要な配置も設備の組み合わせも違っていました。
記事を読む →扉を壁になじませて目立たせないには?3実例で見る「消す・なくす・残す」の分け方
扉を目立たせたくないとき、答えは建具の色だけでは決まりません。壁と同じ仕上げで存在感を下げる家、見えない位置に置いて扉自体を付けない家、ゲスト用と家族用を分けるためにあえて扉を残す家。3つの実例を、そうした理由から整理します。
記事を読む →生活感を隠すキッチン収納は、見える位置で変わる|3実例の隠し方と配置理由
冷蔵庫や電子レンジを隠したいと思っても、収納を増やすだけでは整わないことがあります。3つの実例で先に決まっていたのは、「何をしまうか」より「どこからキッチンが見えるか」でした。見える位置と隠し方をどう組み合わせていたのか、配置理由から整理します。
記事を読む →