勾配天井は開放感だけで決める?採用した家・あえて採用しなかった家の3実例
この記事の内容
帰宅してリビングに入るときや、座って庭を眺めるとき。頭上に広がりがある家にしたいと思うと、勾配天井が候補に挙がります。ただ、「高い天井にしたい」だけでは、庭まで視線をつなげたいのか、木に囲まれた雰囲気を楽しみたいのかまでは決まりません。
今回紹介するのは、異なる工夫をした3つの平屋です。アーチは中庭まで天井を同じ高さでつなぐため、あえて勾配天井を採用しませんでした。エコワークスの家では杉の勾配天井と木になじむインテリアが好まれ、デザイエは屋根の勾配と大きな窓を生かしてLDKの広がりを考えています。
比べたいのは、勾配天井の有無による優劣ではありません。天井を通してどんな景色や雰囲気をつくりたいのか。その目的と手段を分けて見ていきます。
アーチ・中庭のある平屋|高さより先に、外へ続く天井を考える
リビングから中庭まで、同じ高さで天井をつなぐ
アーチの平屋では、リビングのリブ天井を、そのまま中庭まで連続させています。説明で重視されているのは、室内と中庭側の天井が同じ高さでつながることです。その連続性によって、室内が外へ延びていくような広がりを感じさせる意図が語られています。
この家では、天井を高くすると、計画している中庭との連続した天井をつくれなくなるため、勾配天井をあえて見送っています。単に高さを抑えたのではなく、中庭まで続く天井の見え方を優先した選択です。
ここから読み取れるのは、室内だけを見上げたときの高さと、庭へ目を向けたときの広がりは、分けて考えられるということです。庭とのつながりを望むなら、窓の大きさに加えて、その上に見える天井がどこまで続くかも検討したい点になります。
高さの広がりは、一部を折り上げてつくる
一方で、この家は高さ方向の広がりを諦めたわけではありません。中庭へリブ天井を延長しながら、高さも感じられるように、室内の一部を折り上げ天井にしています。天井全体を傾けるのではなく、一部を周囲より高くする方法を選んでいます。
自宅で考えるなら、「天井を全部高くしたい」と伝える前に、どこで高さを感じたいかを整理してみてください。リビングに入った瞬間なのか、座って過ごす場所なのか。庭へ続けたい部分と、上へ広げたい部分を図面に書き分けると、天井の形を相談する出発点になります。
庭を見る位置から、天井のつながりを確かめる
この実例で勾配天井を見送った理由は、中庭との天井の連続性にあります。勾配天井では庭とつながれない、という一般論ではなく、この家で実現したかった天井のつながりに対する判断として捉える必要があります。
打ち合わせでは、室内と中庭を一緒に描いた断面図や室内イメージで確認するとよいでしょう。立った位置だけでなく、普段座る予定の位置からも見て、天井の線がどう続くかを確かめます。折り上げる部分も同じ図に入れれば、横への連続性と上への広がりを一緒に検討できます。
エコワークス・杉の勾配天井の平屋|木を感じる内装として天井を考える
杉の天井と、木になじむインテリアを組み合わせる
エコワークスの平屋では、杉の勾配天井が採用されています。紹介では、木を感じられる造りが気に入っていることに続き、インテリアもできるだけ木になじむようにこだわっていると説明されています。天井の素材と、室内に置く物の関係が一緒に語られている実例です。
ただし、この説明から、木を感じるために勾配天井という形を選んだとまでは言い切れません。確認できるのは、杉の勾配天井があり、その家の木を感じる造りが好まれていることです。形状を選んだ理由と、できあがった空間の好きなところは、分けて受け取りたい点です。
この家を参考にするなら、好きなのは天井の傾きなのか、杉の質感なのか、その組み合わせなのかを考えてみてください。写真を見て「この勾配天井が好き」と感じたときも、惹かれた部分を言葉にすると、自宅で再現したい雰囲気を伝えやすくなります。
テレビボードの素材と仕上げまで目を向ける
リビングのテレビボードにはオーク材が使われ、あえてオイルを塗らないことで、やわらかな風合いに仕上げたと紹介されています。杉の天井に対して、家具には別の樹種を組み合わせています。テレビボードのすっきりしたデザインも、気に入っている点として挙げられています。
ここから読み取れるのは、木の天井だけを切り取らず、目に入る家具まで含めて内装を考える視点です。自宅では、採用したい天井材と、使い続けたい家具の写真や素材見本を並べてみましょう。木の種類を同じにするかどうかより、自分が好む組み合わせになっているかを確かめるためです。
夜に過ごすときの雰囲気も、天井とは別に考える
テレビ背面の壁には間接照明が設けられ、夜の雰囲気も気に入っていると紹介されています。これは杉の天井を照らす照明として説明されているものではありません。木を感じる造りへの満足に加え、壁の間接照明による夜の雰囲気も、この家の好まれている点です。
夜にテレビを見たり、リビングで休んだりする時間を思い浮かべるなら、天井の形だけで完成を判断しないことも大切です。家具と壁の照明を含めた室内イメージを確認し、昼の木の見え方と、夜に求める雰囲気をそれぞれ伝えてみてください。
デザイエ・屋根の勾配を生かした平屋|天井と窓でLDKの広がりを考える
屋根の勾配に天井を合わせ、広く感じさせる
デザイエの平屋では、玄関から入った先のLDKで、屋根の勾配に合わせて天井も勾配天井にしています。その理由は、LDKを広く感じさせるためです。ここでは、勾配天井という形状と、室内の広がりをつくりたい意図が直接結びつけて説明されています。
帰宅してLDKへ入る場面を紹介した後に、天井の形と広がりの話が続きます。ただし、帰宅時の印象だけを狙った設計だとは説明されていません。屋根の形に天井を合わせていることと、広く感じさせたいという意図が、この場面で確認できる内容です。
この家を参考にするなら、平面図で部屋の広さを確認するだけでなく、屋根と天井の形が一緒に分かる断面図も見せてもらいましょう。天井のどちら側が高くなり、どこからその傾きが見えるのか。玄関から入る位置と、日常的に座る位置を図に加えると、自分の過ごし方に沿って検討できます。
天井の高さだけでなく、大きな窓も一緒に見る
LDKの広がりについては、天井が高いことだけでなく、窓が大きいことも理由として挙げられています。動画内では、この組み合わせによって広く感じられると思う、という説明になっています。勾配天井だけの効果を示した話ではなく、天井と窓を含む空間全体への評価です。
読み取れるのは、広がりを求めるときは、頭上の形と窓の見え方を同じ場面で確かめたいということです。天井だけの図と窓だけの図を別々に見るのではなく、LDKに立ったときの視界に両方を入れたイメージで相談してみてください。
窓が大きいから、あるいは天井が高いから、自宅でも同じ印象になると決める必要はありません。まずは予定している屋根の形、天井の傾き、窓を一緒に描いてもらい、どの位置からの眺めを気に入ったかを伝えましょう。勾配天井を付けること自体ではなく、過ごす場所から見える室内を相談の対象にできます。
3実例を比較|外への連続性、木の質感、頭上の広がり
アーチが優先したのは、中庭へ同じ高さで天井が続くことでした。勾配天井は見送り、高さの広がりは一部の折り上げでつくっています。対してデザイエは、屋根の勾配に沿って天井を上げ、大きな窓とともにLDKを広く感じさせることを意図しています。同じ広がりでも、採った手段が異なります。
エコワークスの家で語られているのは、杉の勾配天井を含む木を感じる造りへの満足と、木になじむインテリアへのこだわりです。ほかの2例のような天井形状の選択理由は示されていません。
そのため、エコワークスの家は、勾配天井を選ぶ理由の答えとしてではなく、天井材と家具を一緒に考える参考として見たい実例です。選ぶ前には、庭を見る時間をどう過ごしたいか、室内でどんな素材を眺めていたいか、どの場所で高さを感じたいかを整理してみてください。「開放的にしたい」という希望を、外への連続性、素材の好み、天井と窓の組み合わせに分けて伝えてみましょう。
打ち合わせで確認したいこと
- 庭とのつながりを重視するなら、室内から外まで、どの天井を同じ高さで続けたいですか?
- 中庭へ続く天井の線は、普段座る予定の位置からどのように見えますか?
- 天井全体を傾ける案と、一部だけを折り上げる案では、高さを感じたい場所にどんな違いが出ますか?
- 参考写真で好きなのは、天井の傾き、木の素材感、それとも両方の組み合わせですか?
- 候補の天井材と、使う予定のテレビボードなどの家具は、どのような質感の組み合わせになりますか?
- 夜に過ごすリビングは、壁の照明や家具を含めると、希望する雰囲気になりますか?
- 屋根の勾配に天井を合わせる場合、天井はどちらへ上がり、LDKの入口からどう見えますか?
- 勾配天井と窓を一緒に描いた室内イメージを、入口と座る位置のそれぞれから確認できますか?
勾配天井を採るかどうかは、天井だけで決めず、その先の庭や窓、室内の素材と一緒に考えたいところです。紹介した実例ページも見比べながら、気に入った眺めと、そこで過ごす場面を打ち合わせに持ち込んでみてください。
実例を詳しく見る
あわせて読みたい記事
寝室の照明を抑えるのはなぜ?3実例で見る、まぶしさを避ける置き方と枕元の考え方
寝室は、ただ暗めにすれば落ち着くわけでも、明るければ使いやすいわけでもありません。3つの実例を見ると、照明を抑える理由は、まぶしさを避けたい、子どもが小さいうちは寝室として使う前提に合わせたい、枕元で使う物をまとめたいなど少しずつ違っていました。
記事を読む →洗面と脱衣は分けるべき?3実例に見る、一体化と分離の考え方
朝の身支度を優先するのか、洗濯や入浴まわりを一室でまとめたいのか。洗面と脱衣を一緒にするか分けるかは、見た目よりも『どの重なりを減らしたいか』で変わります。3実例を比べ、そう配置した理由を整理します。
記事を読む →将来変えられる子ども部屋はどう計画する?使う時期と変え方を3つの平屋実例で比べる
今はまだ一緒に寝るし、広く遊べる場所もほしい。でも、いつかは個室が必要になるかもしれない。将来仕切る子ども部屋を考える時、実例で見えてきたのは壁の位置だけではありませんでした。子ども室をコンパクトにして長く使う場所へ面積を回す家、今はフリールームとして広く使う家、寝室やトレーニングルームまで含めて役割を入れ替える家。3つの平屋を、動画で語られた理由から整理します。
記事を読む →